フッ素の重要性:歯の強化と予防に役立つ情報。
名古屋市瑞穂区の鈴木歯科クリニック、歯科医師の鈴木良典です。
日本を含む先進国では、1970年頃より虫歯の本数が減ってきており、「もう虫歯対策は必要ない」と誤解を生んでしまっている例が問題視されています。
では、なぜ虫歯予防が必要であるのでしょうか?
なぜ虫歯予防が必要なのか
まずは、小学生対象のこのグラフをみていただきましょう。さまざまな病気のうち、「虫歯」と「視力1.0未満」の項目が他より飛び抜けて多いのがわかります。
(図1)
このグラフより、耳疾患やぜん息よりも、
圧倒的に歯科疾患が多い
ことがわかっていただけるでしょうか。
- 以前よりは減ったが、依然子供のう蝕(虫歯)は他の疾患に比べて多い(図1)
- 有病率の高い歯科疾患は、子どもの疾患別医療費では上位である
- 子どものう蝕は減っているが、成人以降の治療が必要なう蝕を保有している人の割合は全年齢を通して高いため、幼少期からのう蝕予防が大切である(図2)
- 地域や社会集団による健康格差が生じている
子どもの時の虫歯は大人になってからの歯を失うリスクを高めてしまうことからも、早い時期からの虫歯対策が効果的だと考えられます。
また、人生100年時代を生きる現代、自分の歯で食物を食べることで健康寿命を伸ばすことが重要であり、そのためにも虫歯に対しての理解と対策をしていきましょう。
次に出てくるグラフは、
治療が必要な虫歯を持っている人の割合
を表しています。
(図2)
図2より、3人に1人の割合で、治療が必要な永久歯の虫歯を持っていることがわかります。これらは世界的に見ると標準的で、他の疾患と比べると極めて多いのです。
虫歯予防に有効なフッ化物応用
虫歯の予防法は、大きくわけて3つあります。
- 歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスによる「ブラッシング」
- 糖分のコントロール(おやつの時間の管理など)
- 歯科医院(歯科医師)による定期検診
が有名です。
令和である現在では、それだけでなくフッ化物応用も虫歯予防に良いと考えられており、その有効性は多くの研究で実証されております。
特に幼少期におけるフッ化物応用は、成人におけるそれよりも効果が高いことがわかっています。
実際に、日本におけるフッ化物応用の良い例として1970年新潟県の幼稚園や小学校で開始された集団フッ化物洗口が挙げられます。
開始当時の新潟県は、日本の中でも3歳児う蝕歯数はそこそこの数値で中位でしたが、フッ化物応用を開始してから9年後、当時の3歳児が12歳になった時の統計を見てみると、虫歯の数は激減し、全国一位の記録となりました。
ほかにも、フッ化物応用には、いくつか種類があります。
- ご家庭でフッ素入り歯磨き粉を毎回使用する
- 歯科医院で定期検診の度に、フッ素塗布を受ける
- 幼稚園や小学校でフッ化物洗口を実施する
- 上水道フロリデーション(水道水フロリデーション)
近年では、高濃度のフッ素をたまに行うだけでは足りないとの考えから、低濃度のフッ素入り歯磨剤を歯ブラシのたびに使用するのが有効であると考えられています。
これは、生理的な唾液中に含まれるフッ素濃度が再石灰化を促す濃度に満たないため、低濃度のフッ素入り歯磨剤を高頻度で使用することで歯の表面や結晶付近に滞留し、歯質の脱灰を抑制し、再石灰化を促進させるためのものです。
生理的な唾液中に含まれるフッ素 0.02ppm未満
脱灰抑制・再石灰化を促す濃度 0.03〜0.05ppm以上
フッ素(フッ化物)の安全性・信頼性
フッ化物応用は海外では70年以上の歴史があり、特にフロリデーションにおいては、世界保健機構や米国疾病管理予防センター(CDC)、FDI(国際歯科連盟)、各国の専門機関が安全性を認めております。
フッ素は人工的に作られたものではなく、天然に存在する物質であり自然界でも土の中に280ppm、海水中に1.3ppm含まれています。我々が普段飲む水はもちろん地球上の水、野菜、お肉、魚や海藻などすべての食品にフッ素は含まれており、私たちの身体を構成する元素のひとつでもあります。(体を構成する元素の中で13番目に多いです)
お茶に含まれるフッ化物濃度は、0.48ppm〜3.69ppmである。
林文子,Tediosasongko U, 要根佐穂里ら:各種茶浸出液のフッ素濃度に関する研究、小児歯科学雑誌 37:708-715,1999.
信頼できる審査制度を通過した何万もの研究・論文が水道水フロリデーションの安全性を裏付けており、それによりフッ化物応用が信頼できるものであるといえます。
ひと昔前にフッ素は危険との誤った報道があったように、テレビやインターネットでは正しい情報だけでなく誤った情報も混在しています。
どの情報が正しいのか、この情報は信頼に足るものなのかを判断し、信頼できる歯科医師や医療機関、専門機関の情報には耳を傾ける習慣づけをしていきましょう。
フッ化物塗布が虫歯予防に効果的であるメカニズム
フッ素元素が陰イオン状態であるものをフッ化物またはフッ化物イオンと呼び、フッ素入り歯磨き粉と呼ばれているものはこのフッ化物が含まれている歯磨剤のことを指します。
生えたばかりの幼若な歯はこのフッ化物を歯の中によく取り込み虫歯に今より強い歯を作ることができることから、歯科医院でのフッ素塗布やフッ素入り歯磨剤の使用が有効であるといえます。これは、幼若な歯がフッ化物を取り込むことで歯の組織がHAP(ハイドロキシアパタイト)からFAP(フルオロアパタイト)に変化することによる耐酸性の獲得によるものです。
また、継続したフッ素入り歯磨剤の使用は、細菌の酸産生能力を低下させることもわかっています。
予防効果が期待できるため、お子さんはもちろん大人の方も虫歯予防のためにフッ化物入り歯磨剤を使用することをお勧めしております。
まとめ
- フッ化物塗布は、虫歯予防に有効である
- 安全性は70年以上の歴史と膨大な数の研究論文から裏付けされている
- 一般家庭で、低濃度のフッ素入り歯磨剤を高頻度で使うと良い
- 定期的に歯科医院で高濃度のフッ素塗布を受けると良い
鈴木歯科クリニックでは、お子さんの定期フッ化物塗布を無料で行なっております。
ご予約の際には、便利な24時間WEB予約をご利用ください。
いかがでしたでしょうか?名古屋市瑞穂区の鈴木歯科クリニックでは、今後もお口の健康を守る情報を発信していきます。
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参考・厚生労働省ホームページ
参考書籍・このまま使える Dr.もDHも! 歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本/クインテッセンス出版 (2017/10/10)